武士道として

コロンビア8位、ギリシャ12位、
コートジボアール24位、そして日本47位。
これがFIFAの世界ランキングである。
だから、日本は「順当に言ったら」全敗のはずで、
それから言えば、コートジボアールの1失点がやや悔やまれるが、
ギリシャと引き分けたのはあっぱれであり、
コロンビア戦も、「力尽きた」という感じはあったが、
選手の闘志、戦略、前半の善戦など見るべきところはあった。
選手が「上を目指す」のは結構なことだし、
それを戦いの前に「そんなに頑張らなくても良い」と言わなくてもいい。
だけど、戦いが終わったら、
ランキングとしても試合内容としても良かったのだから、
「ご苦労さん。よく戦った!」と健闘をたたえたかったが、
日本の指揮者やマスコミはザックジャパンを叩いた。
違和感があった。

 ところでコロンビア戦で精も根も尽き果てた長友のところに、
外国のチームメイトが駆け寄って慰めた。
長友は試合が終わって立ち上がれず、
ピッチに座り込んでいることを
コロンビアのチームメートが気がついて駆け寄ったのだ。
戦いは終わり、勝敗は決まった。
でも、スポーツに全力を挙げる人間の魂は崇高なものだ。
そして、長友を抱き、慰めている間に、
コロンビアの他の選手も駆け寄って、
みんなで長友を抱えようとしていた。
まさに「友情」であり「武士道」である。
日本選手はすべてがっくりきていたので、
長友を慰めることはできなかったが、
ゲームが終わって「ノーサイド」になったのだから、
相手の健闘をたたえることこそ日本の誠なのだが、
それをコロンビアの選手が実行していた。
胸が熱くなった。
 でも、日本では監督の責任を問い、
エースクラスはまるで罪人のように肩を落としていた。
そうではない。君たちは立派だった。
サッカーのような力と力の勝負の中で、
よく内容の濃いゲームを見せてくれた。
君たちの戦いはやがて日本の多くの子供たちが
サッカーを楽しむインセンティブになるだろう! ご苦労さん!!
武田邦彦 (中部大学)